悪縁を断つ寺 鎌八幡 4 :: デイリーSKIN

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[2007年08月17日00時00分00秒]
悪縁を断つ寺 鎌八幡 4

どこにも行けない金曜日の深夜、

一人で蒸し暑い夜を過ごすには

もう少し涼しくなる必要がありそうですね。

全て本当のお話。

そう、実話なのです。


前回までははこちらをクリック

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┃『悪縁を断つ寺 鎌八幡 4』(ライターFT)
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 修さんが一緒に住み始めた彼女、リョウコは殺害されてしまった。
それもひどい殺害のされ方だった。

 散々、暴行を受けた挙句、何度もレイプされたようだった。
リョウコの陰部は裂傷が激しく、顔面は原型が無くなるほどに殴られていた。死因は頭部の激しい打撲による頭蓋骨骨折。

 Mはすでに指名手配されていた。

 修さんが最初に疑ったのが対立していた職人のMだった。
もちろん、周りにいる誰もがそう思っていた。職人Mの行方は分からずじまいだった。警察の調べでも間違い無いようで、修さんは血眼になってMを捜した。

 修さんは仕事も辞め、Mの行方だけを必死になって追い求めた。
Mには母親と中学生になる息子がいた。修さんはずっと母親と息子を見張り続けていた。修さん本人もオレに言っていたが当時は復讐しか頭になかったようだ。

 『必ずMを八つ裂きにしてやる!』

 修さんにはそれしか考えられなかった。

 精神はすでに崩壊していた。
Mの実家に張り込むこと、約2か月、昼の12時を過ぎた時、ひょっこりとMが姿を現した。修さんはMが実家の扉を開くその時を目がけて、隠し持っていた包丁を力の限りMに振り下ろした。

 後ろから力の限りMの首筋目がけて包丁を突き立てた。

 Mは鈍い声を上げ、振り返る事も出来ずに前のめりに倒れた。その倒れたMの背中にまたがり、何度も包丁をMの背中に振り下ろした。淡々と包丁を振り下ろす修さん、14か所、Mは根本まで包丁を突き立てられ絶命した。

 Mの母親が警察に連絡したらしい。その場で修さんは現行犯逮捕されてしまった。

 修さんは逮捕され、裁判で懲役8年の刑を言い渡され、徳島県の刑務所に収監された。

 異変がおこったのは刑務所に収監されて1週間程経った時だった。夜、眠っていると横で寝ている囚人が寝言を言いだした。不思議な事にその寝言と言うのが修さんしか聞こえない寝言なのだ。次の日、寝言を言っている囚人の隣の囚人、つまり修さんとは反対側に寝ている囚人に聞いても、


『そんな寝言は聞かなかった』


と言うのだ。

 しかもその間、修さんは金縛り状態で全く動けないと言うのだ。

 その寝言と言うのが


 『首と背中が焼けるように痛い、お前何かやったのか?』


 それを1時間ほど繰り返すのだ。
寝言を言っている本人にも聞いたのだが、身に覚えがないと言う。その寝言は毎日続いた。あまりに不気味なので担当の刑務官に事情を説明するのだが、もちろん聞いてもらえない。

 昼の刑務は木工所で作業していた修さん、かなりの寝不足になっていた。ある時、ちょっとした事故で人差し指を軽く怪我した修さん。傷は少し深めだったがそれほどでは無い。縫う傷でもなかったが、傷口がいつまでたっても塞がらずに膿まで出始めた。ようやく治りかけたのは1年程してからだと言う。

 大阪に出てきて修さんを慕ってくれていた友達が月に一度、手紙を書いて送ってくれていた。修さんはそれが刑務所での唯一の楽しみだった。その友達からの手紙に不思議なことが書かれていた。

 Mの母親と息子は事件があってから、完全に姿をくらましていたが、ある時ひょっこり、修さんの友人(手紙を送ってくれていた)の前に姿を現した。Mの母親と息子が一緒にだった。友人の前に姿を現したMの母親はまるで別人のようだったとの事。どういった訳かMの母親は友人の前で、薄気味の悪い笑みを浮かべながら一言も喋らなかったらしい。

 かわりにMの息子が荒んだ表情で、友人にまくし立てるように言った。


 『あいつのせいでひどい事になってしもたやんけ!お前も同罪やぞ!地獄に送ったるからな!』

 
 事件当時は中学生だった彼も今は17,8歳になっている。
大柄だったMには似ずに、中学生の頃と背丈は変わらなかったようで、栄養が足りていないのか、目だけが大きくギラギラし、体はやせ細り、肌の色もどす黒い感じだった。

 その手紙を最後に、友人からの便りは途絶えてしまった。

 修さんは獄中から友人に向け手紙を送ったが、何度送っても音沙汰は無かった。やはり横で寝ている囚人は相変わらず同じ寝言を繰り返していたようで、修さんの金縛りも取れるどころか強くなっていったようだ。

 そんな生活が2年ほど続き、修さんは精神的に参っていた。
獄中で修さんが唯一の楽しみだったのが読書だった。その頃から修さんは怪奇現象などを詳しく書いた本を読み漁っていた。その結果、修さんが出した結論と言うのが ”呪い”だった。

 基本的に修さんは田舎出身の人なのでそういった話は信じていた。
友人からの最後の手紙から察するに、Mの母親と息子が何らかの呪いをかけているのではと考えていたようだ。

 冬になると毎年必ず高熱にうなされる修さん。
その時に見る夢とも幻覚とも取れる中で必ず登場するのが、小汚い少年と薄気味の悪い老婆だった。修さんはそれが変わり果てたMの母親と息子だと言うことは理解していたが、監獄の中ではお経を唱える事くらいしか出来なかった。

 6年が過ぎた冬、修さんに仮釈放が下りた。
ようやく娑婆に出れる修さんだったが、体はやせ細り、頬はこけ、癌に侵されてしまっていた。 










次週に続く!











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