悪縁を断つ寺 鎌八幡 昨年の続き 修さんに捧ぐ :: デイリーSKIN

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[2008年09月06日00時00分00秒]
悪縁を断つ寺 鎌八幡 昨年の続き 修さんに捧ぐ

昨年の8/31で止まっていた分の続きになります。

何故、止まっていたのか?

この物語の主人公である ”修さん“ が昨年お亡くなりになられました。

結果から言いますと自殺です。

住んでいた市営団地の5階から飛び降りたのです。



原因は不明。

検死の結果、多量の酒が飲まれていたとのことです。

こういった事情があったので書くに書けないでいましたが、あまりの反響の多さに続きを書く決意が出来ました。





前回までの悪縁を断つ寺 鎌八幡はこちら!


(ライターFT)

 
『悪縁を断つ寺 鎌八幡 昨年の続き 修さんに捧ぐ』



住職の話によるとそれはかなり危険な行為。

 呪う相手だけでなく、呪いをかけた本人にも何らかの障害が起こりうる
と言うことらしい。例えば不慮の事故や大切な人に何か危害があったり
と、様々な災いが呪いをかけられた人だけでなく、本人にも。



 肝臓癌に犯されていあた修さんは自分の命が残り少ないと感じていた。修さんは、刑務所から出所してからも病院には行かなかった。自分の命な
んていらないとさえ思っていた。

 鎌八幡の住職に全てを打ち明けた後、何故か胸のつかえが取れたような
爽快感を感じていた。

 『俺はもう、思い残すことは無い、呪われて死んでしまうならそれでも
構わない。それでMの、残された家族が報われるのであれば自分が死んだ
ってかまやしない!』



 自分が犯してしまった罪と罰、刑期中はそのことについていつも考えて
いた修さん。Mの家族はMがいなくなってからどれほどの苦労をして、ど
んな地獄を見たんだろうか?

 ようやく、そういう風に考えることが出来るまでになった修さん。

 しかし住職に全てを話した後、黙って修さんの話に耳を傾けていた住職
はまるで全てを見透かしたような言葉を発した。




 『まずは病院に行きなさい。』

 内心、修さんは驚きを隠せなかった。

 『何故、俺の病気をこの人は知っているんだ!』

 静かに住職は口を開いた。

 『あんたの横には女性が憑いてますわな、あんたのことを愛おしそうに
見つめてますさかい』


 修さんは誰だかすぐに分かった。

 『リョウコか!リョウコがここにおるんか!』

 自然に溢れ出る涙を拭うこともなく、修さんはそばにリョウコがいるこ
とを確信した。住職は続けた。

 『病院に行ってまず体を治しなさい。今ならまだ大丈夫。あんたの横に
いる人がそう言うてますわいな、ある程度体力がないとこれからする祈祷
にも体がついていかへん思います。』


全てお見通しの住職。

 修さんは住職に自分が考えていることを全て打ち明けた。

 母が他界し、その保険金を残されたMの妻と息子に全て渡そうと考えて
いること、自分自身が肝臓癌に犯されていること、自分は死んで詫びなけ
ればいけないと思っていること。

 しかし住職の考えは違った。

 『あんたは生きていかなあきまへん。生きることが唯一の罪滅ぼしやと
思いなされ、残された家族がしていることはあんただけでなく、本人にも
災いがおきることですから。あんたはそれでええんかいな』


 修さんは自分が犯した罪を悔やんでいた。

 Mを殺めたことでリョウコが戻って来るはずも無い。今、修さんの傍に
いるリョウコもそれを望んではいないはず。

 心優しいリョウコの気持ちが時を経て、痛いくらいに修さんの心に伝わ
って来ている。修さん自身も自分がしでかしたことを悔やんでいる。

 『住職、わし病院に行って体を治します。治してからMの遺族を探して
金を渡してやりたいんや、何も許して貰おうなんて気はありまへん』

 住職はゆっくりと頷いた。

 住職によるとまず病院で病状を診察してもらい、体力的に体が持つので
あればすぐにでもお払いをしないといけないとのことだった。

 お寺を後にした修さんは翌日、病院で診て貰った。

 病院の待合室で待っている途中、今までの不可思議な体験を思い返して
いた。

 徳島刑務所で同じ房の囚人が毎夜放つ寝言。



 『首と背中が焼けるように痛い、お前何かやったのか?』

 まさにその寝言は修さんがMを殺害した時の状況そのものだった。

 激しい怒りにまかせ、首と背中14箇所を滅多突きにしたのだ。

 獄中で作業中にちょっとした怪我が1年ほど治らなかったこと、出所後に
借りたアパートで毎夜同じ夢を見ること。アパートの天井裏に人型の紙に
修さんの名前が書かれ、五寸釘が打ち付けられていたこと。



 ”紙人形(かみひとかた)“形代(かたしろ)

 完全に呪いの儀式だった。

 修さんは自分自身が呪われていることを理解していた。それも仕方ない
ことと半ば諦めてもいた。誰がどうやって”紙人形(かみひとかた)“形代
(かたしろ)をアパートの天井裏に置いたのかさえ分からない。

 Mの遺族なのか?

 謎だけが残る。

 他にも不可思議なことはもっとあったが時と共にどうでも良くなっていた。

 そんなことを病院の待合室で考えていた修さん。

 斜め向かいから何となく嫌な雰囲気を感じていた。
誰かがこっちを見ている。さっきからずっとこっちを見ていたようだ。そ
の目つきは鋭く、悪意に満ちていた。

 しかしどこかで見たような顔だ。
しかし思い出せない。こっちを睨んでいた人物がニヤリと笑みを浮かべ、
不気味な表情でこちらに近寄ってきた。

 年の頃は50代後半、髪はボサボサで痩せこけた頬がさらに不気味さを強
調していた。しかしどこかで見た覚えがある顔だった。その人物が近づく
につれ、正体がはっきりと分かった。

 思わず、修さんは声を出していた!

 『マサ!お前どこにおったんや!』

 思わず声が大きくなった。
それも仕方ない。刑期を終え、大阪に戻ってきた時に一番に探した友人の
マサだった。マサは修さんの大工職人としての技量と人柄に惚れ、弟のよ
うに慕っていた友人だ。

 24歳の時にMを殺めた修さんも6年の刑期をを終え、31歳になっていた。
マサは修さんより1つ下の30歳だったが、今の彼の姿はどう見ても50代後半
にしか見えなかった。一体どうしたんだ!その光景が俄には信じられない
修さん。

 ゆっくりと近づいてくるマサの表情はどことなく生気がない。しかも30
歳という年齢にも関わらず、何と言う老けようだ。

 修さんの目の前に立ちはだかる、一見50代後半のこの男に何があったの
か?目の前にいるマサは生気のない表情でつぶやいた。

 『おまえ死ぬんやな。お前が死んだら俺も楽になれるんや』

 

 

 

 

 

 

 次回掲載予定は10月!













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